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「リノベーションの現場」

今日は工学院での今年最後の講義でした。

最後の講義に選んだ題材は「リノベーションの現場」です。

リノベーションは通常の大学講義では、なかなか取り上げられることが無いので、私が最近感じたノベーションの現場での葛藤の様なものを伝えられれば、これから社会に出て行く学生にとって有意義な講義になると思い選びました。

海外と日本ではリノベーションを巡る環境が全く異なります。

アメリカやイギリスでは住み手が変わる度に修繕が加えられた100年以上前の住宅が高値で取引されているのに比べ、日本の住宅は30年程度で不動産価値を失い、取り壊されてしまうケースが多い状況です。

その原因は、建物の老朽化、耐震性の問題だけでなく、30年間のあいだでおきたライフスタイルの変化に建物が対応しきれない事など多岐に渡りますが、日本人の「中古はイヤ新しい物が良い」という意識の問題も大きいと思います。

しかし、これまでのようなスクラップアンドビルドは見直さなければならない時期に来ている事は間違いありません。

日本の住宅の殆どは木造なのですが、森に植えた木が住宅に適した木材の太さま成長するのに60〜100年程必要です。つまり木造住宅は60年から100年使わないと、森を消費してしまっている事になります。

今回講義で取り上げた住宅は築30年の木造住宅のリノベーション。

一件の住宅が取り壊しを免れ、このリノベーションを経て新しい家族に受け継がれていく様子をTV番組の様にショーアップされたものではなく、設計者と施主のやり取りや現場での様子を100枚を超えるスライドで、ありのままの生々しい姿を学生に見て貰いました。

この講義には意匠系の学生だけでなく、まちづくり系、構造系、設備系の学生もいます。今回のプロジェクトが今後の住宅の正解という事ではなく、それぞれの立場で、この現状と課題を感じて自分自身で考えて貰う機会になってくれる事を期待しています。

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